縦型動画広告の仕事とは?
職種・スキル・1日の流れを現場から解説
TikTok・Instagram Reels・YouTube Shortsの普及により、縦型動画広告の市場は急拡大しています。しかし「具体的にどんな仕事をするのか」「どんなスキルが必要なのか」は、まだあまり知られていません。本記事では、縦型動画広告の現場で働く視点から、職種・スキル・1日の流れ・キャリアパスまでを解説します。
この記事のポイント
- 縦型動画広告業界には「クリエイター」「広告運用」「ディレクター」の3つの主要職種がある
- 少人数チームでは1人が複数の役割を担い、企画から納品まで一気通貫で関われるのが特徴
- 未経験からでもスタートでき、成長市場だからこそキャリアの可能性が広い
縦型動画広告業界とは
縦型動画広告とは、TikTok・Instagram Reels・YouTube Shortsなどのプラットフォーム上で配信される、スマートフォンの縦画面に最適化された動画広告のことです。国内の動画広告市場は2025年に7,000億円を超え、年20%以上のペースで成長を続けています。その中でも縦型ショート動画は、ユーザーの視聴時間が急増している注目領域です。
この市場で事業を展開する企業は大きく3つに分かれます。
- 広告代理店:広告主の代わりに広告運用やクリエイティブ制作を担当する企業。成果報酬型で運用する代理店も増えています
- 制作会社:動画の企画・撮影・編集に特化した企業。代理店から案件を受けるケースが多いです
- インハウスチーム:広告主が社内に持つ運用・制作チーム。自社商材に深い理解がある強みがあります
いずれの形態でも、共通しているのは「大量のクリエイティブを高速に回し、データで成果を追う」という仕事のスタイルです。TVCMのように1本の映像を丁寧に作り込むのではなく、月に数十〜数百本の動画を制作・テストし、成果の出るパターンを見つけていくのが縦型動画広告の特徴です。
主な職種と役割
クリエイター(台本作成・撮影・編集)
縦型動画広告の「作り手」がクリエイターです。広告クリエイティブの企画・台本作成から、撮影、編集までを一貫して担当します。
具体的な業務は以下の通りです。
- 台本作成:商材のリサーチをもとに、ターゲットに刺さる動画の構成と台本を作成。1案件あたり数十〜数百本の台本を書くこともあります
- 撮影:スマートフォンや簡易な機材を使い、UGC(ユーザー生成コンテンツ)風の自然な動画を撮影
- 編集:テロップ・BGM・SE(効果音)を加え、最初の1秒で視聴者の手を止める動画に仕上げる
最も重要なのは「フック」と呼ばれる冒頭の掴みです。TikTokのユーザーは0.5秒で興味がなければスワイプするため、冒頭で「自分ごとだ」と感じさせる構成力が求められます。
広告運用(配信設定・データ分析・PDCA)
作られたクリエイティブを「届ける」のが広告運用の役割です。TikTok Ads ManagerやMeta広告マネージャなどの管理画面を操作し、広告配信の設定・最適化を行います。
- 配信設定:ターゲティング(年齢・性別・興味関心)、入札方法、予算配分の設計
- データ分析:CPI(インストール単価)、CTR(クリック率)、フック率(2秒視聴率)などのKPIを日次で確認
- PDCA:成果の良いクリエイティブを横展開し、成果の悪いものを差し替える。クリエイターへの改善フィードバックも重要な業務です
数字を見て仮説を立て、改善策をクリエイターと一緒に実行するサイクルの速さが成果を左右します。
ディレクター(企画・窓口・品質管理)
案件全体を「まとめる」のがディレクターです。クライアントとの窓口となりながら、クリエイターと運用担当をつなぎ、プロジェクト全体の方向性と品質を管理します。
- 企画設計:クライアントの商材・KPIを理解し、どんな訴求軸でクリエイティブを展開するかの戦略を立てる
- クライアントコミュニケーション:進捗報告、成果レポートの共有、レギュレーション(広告表現のルール)の確認
- 品質管理:台本やクリエイティブが訴求方針に合っているか、法規制に抵触していないかをチェック
少人数チームでは兼務が基本:大手の広告代理店では各職種が完全に分かれていますが、少人数のチームでは1人がクリエイターと運用を兼ねたり、ディレクターが台本を書いたりすることが一般的です。そのぶん、案件の全体像を把握しやすく、成長スピードが速いのが特徴です。
それぞれに求められるスキル
クリエイターに求められるスキル
- 構成力・台本作成力:15〜60秒という短い尺の中で、フック→問題提起→解決策→CTAの流れを設計する力
- 動画編集スキル:CapCut・Premiere Pro・After Effectsなどの編集ツールの操作。テロップやSEのタイミング調整が重要です
- トレンド感度:TikTokやReelsで今何がバズっているかを常にキャッチアップし、クリエイティブに反映する力
- リサーチ力:商材のターゲットが何に悩み、何を求めているかを深掘りする力。台本の質はリサーチの質で決まります
広告運用に求められるスキル
- データ分析力:広告管理画面やスプレッドシートでKPIを集計・分析し、改善ポイントを特定する力
- 広告プラットフォームの知識:TikTok Ads Manager、Meta広告マネージャなどの操作スキル。入札ロジックや配信アルゴリズムの理解
- 論理的思考力:「なぜこのクリエイティブは成果が出たのか」「次に何を試すべきか」を構造的に考える力
- コミュニケーション力:データから得た示唆をクリエイターに分かりやすく伝え、改善を促す力
ディレクターに求められるスキル
- 企画力:商材の強みとターゲットのインサイトを結びつけ、訴求の方向性を設計する力
- プロジェクト管理力:複数案件を同時進行で管理し、納期・品質・コストのバランスを取る力
- クライアント対応力:ビジネスレベルのコミュニケーションで、信頼関係を構築する力
- 業界知識:薬機法・景品表示法・各プラットフォームの広告ポリシーなど、法規制に関する知識
いずれの職種も、最初からすべてのスキルが必要なわけではありません。SNSを日常的に使っていて、「なぜこの動画はバズったのか」を考える習慣がある方であれば、実務を通じてスキルを身につけていけます。
1日の流れ(少人数チームの場合)
少人数チームで縦型動画広告の仕事をしている場合、1日は以下のような流れになります。
- 9:00 - 朝のデータ確認:前日の配信データ(CPI・CTR・フック率など)をチェック。成果の良いクリエイティブと悪いクリエイティブを把握します
- 9:30 - チームミーティング:データをもとに、今日の優先タスクを共有。「この訴求が伸びているから横展開しよう」「この案件はフック率が低いから冒頭を変えよう」といった方針を決めます
- 10:00 - 台本作成:リサーチ結果や過去の成果データをもとに、新しい台本を作成。1日あたり5〜10本のペースで書くことも珍しくありません
- 13:00 - 撮影:完成した台本をもとに撮影。スマートフォンとリングライト、簡易マイクがあれば十分です
- 15:00 - 編集:撮影素材にテロップ・BGM・SEを加えて仕上げます。1本あたり30分〜1時間程度が目安です
- 17:00 - レビュー・入稿:完成した動画をチームでレビューし、問題がなければ広告管理画面に入稿。配信設定を確認して配信開始です
- 18:00 - 振り返り・翌日の準備:本日の成果を簡単に振り返り、翌日のタスクを整理して終了
特徴的なのは、企画→制作→配信→分析のサイクルが1日〜数日で完結する点です。TVCMや長尺動画の制作が数週間〜数カ月かかるのに対し、縦型動画広告では「朝に考えたアイデアが夕方には広告として配信されている」というスピード感があります。
この仕事のやりがい
自分が作った動画がバズる
自分で考えた台本、自分で撮影・編集した動画が何万回、何十万回と再生される経験は、この仕事ならではの醍醐味です。「自分が作ったクリエイティブでアプリのインストール数が急増した」という実感を、早い段階から味わえます。
数字で成果が見える
縦型動画広告の仕事では、自分の仕事の成果がすべて数字で可視化されます。フック率・CTR・CPI・CVRなど、「この動画はどれだけ成果を出したのか」が明確にわかるため、やったことの結果がダイレクトに返ってくる実感があります。感覚ではなくデータで勝負できる環境です。
成長市場で希少な人材になれる
縦型動画広告は市場の成長に対して、経験者の数が圧倒的に足りていません。今この領域でスキルを積めば、数年後には業界の中核を担う希少人材になれる可能性があります。特に「企画から運用まで一気通貫でできる人材」の市場価値は非常に高いです。
キャリアパス
縦型動画広告業界でのキャリアは、以下のようなステップで成長していくのが一般的です。
- 未経験〜半年:アシスタント / ジュニアクリエイター
まずは先輩の台本を参考にしながら、台本作成と編集の基礎を習得します。商材リサーチやトレンド分析のやり方もこの段階で身につけます - 半年〜1年:クリエイター / 運用担当
自分で台本を書き、撮影・編集・入稿まで一通りこなせるようになります。データを見て自分で改善策を考え、実行する力がつく段階です - 1〜2年:シニアクリエイター / ディレクター
複数案件を担当し、後輩の指導やクライアント対応も任されるようになります。「勝ちパターン」の引き出しが増え、再現性のある成果を出せるようになります - 2〜3年:マネージャー / 事業責任者
チーム全体の成果に責任を持ち、採用・育成・案件の獲得にも関わるポジションです。自分だけでなく、チームで成果を出す仕組みを作る段階です
注目すべきは、他の広告業界と比べてキャリアアップのスピードが速いことです。市場の成長とともにポジションが増え続けているため、実力次第で短期間のうちに責任あるポジションを任されるケースが多くあります。
「一気通貫」のスキルが武器になる:企画・台本作成・撮影・編集・運用・分析まで一通り経験していると、どんなポジションに就いても全体像を理解した上で仕事ができます。最初から専門特化するよりも、まずは幅広く経験を積むことをおすすめします。
まとめ
縦型動画広告の仕事は、「企画→制作→配信→分析」のサイクルを高速で回し、数字で成果を追うスタイルです。クリエイター・広告運用・ディレクターという3つの職種があり、少人数チームでは複数の役割を兼務しながら、案件全体に深く関わることができます。
市場は急成長しており、この領域で経験を積んだ人材の価値は年々高まっています。未経験からでもスタートでき、実力次第で短期間にキャリアアップできる業界です。「自分の手で作ったものが世の中に届き、数字で結果が返ってくる」。そんな仕事に興味がある方にとって、縦型動画広告の世界は大きな可能性を秘めています。