運用改善 2026.04.11

TikTok MAI(Minimum ROAS App Install)とは?
VO導入前のステップとして活用する方法

TikTok広告でアプリインストールのROASを改善したいが、いきなりVO(Value Optimization)に切り替えるのはリスクが高い。そんな場面で活用したいのがMAI(Minimum ROAS App Install)です。本記事では、MAIの仕組みからVOとの違い、設定手順、ROAS下限の決め方、そしてVOへの移行判断まで体系的に解説します。

この記事のポイント

  • MAIは「ROAS下限を守りつつインストール数を最大化」する入札戦略。VOの前段階として導入しやすい
  • ROAS下限は現状のDay 7 ROASの70〜80%を初期値に設定し、段階的に引き上げるのがセオリー
  • MAIで安定したら(週50件以上のCV、ROAS下限引き上げ耐性あり)VOへ移行してROAS最大化を狙う

MAI(Minimum ROAS App Install)とは

MAI(Minimum ROAS App Install)は、TikTok Ads Managerで利用できるアプリインストールキャンペーン向けの入札戦略の一つです。広告主が設定したROAS下限(Minimum ROAS)を守りながら、インストール数を最大化することを目的としています。

通常のアプリインストールキャンペーン(AEO:App Event Optimization)では、CPIやCPAを基準に最適化を行います。一方、MAIではROASという「収益に直結する指標」を基準にするため、インストール後の課金・購入行動まで見据えた配信最適化が可能になります。

MAIが参照するROASは、MMP(AppsFlyer・Adjustなど)から連携されるアプリ内収益データに基づいて算出されます。TikTok側の機械学習モデルが、設定されたROAS下限を下回らないようにインプレッションの配分を自動調整する仕組みです。

MAIとVOの違い

MAIとVO(Value Optimization)はどちらも「収益」を意識した入札戦略ですが、最適化の方向性が異なります。

  • VO(Value Optimization):ROASの最大化を目的とする。高LTV(顧客生涯価値)ユーザーに集中して配信するため、ROASは高くなりやすいが、配信ボリュームが絞られやすい
  • MAI(Minimum ROAS App Install):ROAS下限を守りつつインストール数を最大化する。ROAS下限さえクリアしていれば幅広いユーザーに配信するため、ボリュームを確保しやすい

簡単に言えば、VOは「ROASを天井まで伸ばす」戦略、MAIは「ROASの床を決めてスケールさせる」戦略です。VOは十分なコンバージョンデータと高いROAS実績がないと機械学習が安定しにくいため、MAIで基盤を作ってからVOに移行するのが実務上のベストプラクティスです。

AEO・MAI・VOの位置づけ

TikTokアプリ広告の入札戦略は、以下のステップで段階的に高度化していくイメージです。

  1. AEO(App Event Optimization):CPI/CPAベースの最適化。まずインストール数とイベント数を稼ぐ
  2. MAI(Minimum ROAS App Install):ROAS下限を導入し、収益を意識しつつボリュームを維持
  3. VO(Value Optimization):ROAS最大化。高LTVユーザーに集中配信してROIを最大化

この段階的アプローチにより、十分なデータ蓄積と機械学習の安定化を両立させながら、収益性を高めていくことができます。

MAIのユースケース

MAIは以下のような場面で特に有効です。

  • VOの前段階として:VOに必要なコンバージョンデータが十分に蓄積されていない段階で、ROAS意識の配信を始めたい場合
  • ROAS下限を守りつつスケールしたい場合:AEOで一定のインストール数は確保できているが、ROASが不安定。最低限のROASを担保しつつ配信量を維持したい
  • 新規クリエイティブのテスト時:新しいクリエイティブを大量投入する際、ROASの底割れを防ぎながら幅広くテストしたい
  • 季節変動への対応:繁忙期にスケールを優先しつつ、ROASが一定水準を下回らないようにガードレールを敷きたい

ROAS下限の設定方法

MAIの成否を左右する最も重要なパラメータがROAS下限(Minimum ROAS)です。適切な初期値の決め方と調整のコツを解説します。

初期値の決め方

基本的な考え方は、現状のDay 7 ROASの70〜80%を初期値として設定することです。

  1. 直近2〜4週間のDay 7 ROASの平均値を算出する(MMPのダッシュボードで確認)
  2. その平均値に0.7〜0.8を掛けた値をROAS下限として設定する
  3. 例:直近のDay 7 ROAS平均が150%の場合、ROAS下限は105〜120%に設定

この「70〜80%ルール」を採用する理由は、配信ボリュームを確保するためのバッファです。ROAS下限を現状のROASと同じ値に設定すると、TikTokの機械学習が「条件を満たすユーザー」を見つけきれず、配信が極端に絞られてしまいます。

段階的な引き上げ

初期設定で安定した配信が確認できたら、ROAS下限を段階的に引き上げていきます。

  • 1回の引き上げ幅は5〜10%に留める
  • 引き上げ後、3〜5日間は配信量とROASの推移を観察してから次の調整を行う
  • 配信量が急減した場合は、直前の値に戻して様子を見る

ROAS下限の調整は「少しずつ、こまめに」が鉄則です。一気に引き上げると機械学習がリセットされ、再学習に時間がかかります。

MAIの設定手順

TikTok Ads ManagerでのMAI設定手順を、ステップごとに解説します。

STEP 1:キャンペーンの作成

TikTok Ads Managerで新規キャンペーンを作成し、広告目的として「アプリプロモーション」を選択します。キャンペーン予算タイプは「日予算」または「通算予算」のいずれかを選択できますが、MAIでは日予算設定が配信安定性の面で推奨されます。

STEP 2:広告グループの設定

広告グループの最適化目標で「Value」を選択し、入札戦略として「Minimum ROAS」を指定します。ここでROAS下限値を入力します。

  • プレースメント:TikTok単体、またはTikTok+Pangleの組み合わせ
  • ターゲティング:初期はブロードターゲティング(年齢・性別のみ)を推奨。絞りすぎると配信量が出にくい
  • 日予算:目標CPIの50倍以上を目安に設定(例:目標CPI 1,000円なら日予算5万円以上)

STEP 3:MMP連携の確認

MAIが正しく機能するには、MMPからTikTokへの収益データ(Revenue)のポストバックが正確に設定されている必要があります。以下を確認してください。

  1. MMPの管理画面でTikTokパートナー連携が有効になっていること
  2. アプリ内購入イベント(Purchase / Subscribe等)のポストバックが「すべてのメディアソース」または「TikTok」に対して有効になっていること
  3. Revenue値が正しく送信されていること(テストデバイスで実際にイベント発火を確認)

MMP連携が不完全だと、TikTok側でROASを正しく算出できず、MAIの最適化が機能しません。設定前に必ずMMPのセットアップを完了させてください。

STEP 4:クリエイティブの登録と配信開始

広告クリエイティブを登録し、配信を開始します。MAIではクリエイティブの質がROASに直結するため、複数パターンのクリエイティブを同時にテストすることを強く推奨します。最低でも5〜10本のクリエイティブを広告グループに登録し、TikTokの自動最適化に判断材料を与えましょう。

MAI運用のコツ

ROAS下限を厳しくしすぎない

最もよくある失敗が、ROAS下限を高く設定しすぎて配信が出ないパターンです。MAIの目的はあくまで「ROAS下限を守りつつスケール」であり、「ROASを最大化」することではありません。ROASの最大化はVOに任せ、MAIではボリュームとROASのバランスを重視してください。

学習フェーズを忍耐強く待つ

MAIに切り替えた直後は、機械学習が新しい最適化目標に適応するまで3〜7日間の学習フェーズが発生します。この期間はCPI・ROASが不安定になることがありますが、すぐに設定を変更せず、学習が完了するまで待つことが重要です。頻繁な設定変更は学習をリセットし、安定化を遅らせます。

クリエイティブのリフレッシュを止めない

MAIにおいても、クリエイティブのファティーグ(消耗)は避けられません。週に2〜5本の新規クリエイティブを継続的に追加し、パフォーマンスが低下した素材は早めに停止しましょう。特にフック(冒頭の掴み)のバリエーションを増やすことが、配信ボリュームの維持に直結します。

日予算は十分に確保する

MAIの機械学習が効果的に機能するためには、1日あたり最低20〜30件のインストールを獲得できる予算が必要です。予算が少なすぎると学習データが不足し、ROAS下限を満たすユーザーの特定が進みません。目標CPIの50倍以上を日予算として確保してください。

クリエイティブの量と質がMAI成功の鍵:MAIではROAS下限を守るために、「インストール後に課金するユーザー」を引きつけるクリエイティブが求められます。フックの切り口、訴求軸、ターゲットペルソナを多角的にテストするには、大量のクリエイティブを高速で回す体制が不可欠です。ZVAなら最短ご発注から3営業日で広告配信を開始でき、1か月で59本のクリエイティブを制作・配信した事例もあります。

MAIからVOへの移行タイミングと方法

移行の判断基準

MAIからVOへの移行を検討するタイミングは、以下の条件が揃ったときです。

  • 安定した配信量:広告グループあたり週50件以上のインストールを2〜3週間継続している
  • ROAS下限の引き上げ耐性:ROAS下限を段階的に引き上げても配信量が大きく減少していない
  • 収益データの蓄積:MMPに十分なアプリ内収益データが蓄積されており、Day 7 ROASの傾向が安定している
  • クリエイティブの勝ちパターンが見えている:高ROAS素材の傾向(訴求軸・フック・構成)が把握できている

移行の手順

MAIからVOへの移行は、既存のMAI広告グループを停止してVOの新規広告グループを作るのが基本です。既存の広告グループの入札戦略を途中で変更すると、学習がリセットされるリスクがあるためです。

  1. MAIで高パフォーマンスだったクリエイティブとターゲティング設定をそのままVO用の広告グループに移植する
  2. VOの広告グループを配信開始し、3〜5日間の学習フェーズを経る
  3. VOの配信が安定したことを確認してから、MAIの広告グループを段階的に予算縮小・停止する
  4. MAI・VOを並行運用する「ブリッジ期間」を1〜2週間設けることで、全体の配信量の急減を防ぐ

VOへの移行がうまくいかない場合

VOに切り替えた後に配信量が極端に減少する、またはROASが安定しない場合は、一度MAIに戻すことも選択肢です。VOは要求するデータ量がMAIより多いため、まだデータが不足している可能性があります。MAIでさらにデータを蓄積してから、再度VOへの移行を試みてください。

まとめ

MAI(Minimum ROAS App Install)は、AEOからVOへのステップアップにおける重要な中間ステップです。ROAS下限というガードレールを設けることで、収益性を担保しながらインストール数のスケールを実現できます。

成功のポイントは、ROAS下限の適切な初期設定(現状Day 7 ROASの70〜80%)と段階的な引き上げ、そして十分なクリエイティブ量の確保です。MAIで安定した基盤を築き、データが十分に蓄積されたタイミングでVOに移行することで、TikTok広告のROIを段階的かつ着実に最大化していくことができます。

よくある質問

TikTok MAIとVOの違いは何ですか?
VO(Value Optimization)はROASの最大化を目的とした入札戦略で、高LTVユーザーに集中配信します。一方MAI(Minimum ROAS App Install)は、設定したROAS下限を守りつつインストール数を最大化する入札戦略です。VOはROAS重視で配信量が絞られやすく、MAIはROAS下限さえ満たせば広く配信されるため、ボリュームを確保しやすい特徴があります。
MAIのROAS下限はどのくらいに設定すればよいですか?
現状のDay 7 ROASの70〜80%程度を初期値として設定するのが一般的です。例えば、直近のDay 7 ROASが150%であれば、105〜120%をROAS下限として設定します。最初から厳しい数値を設定すると配信ボリュームが出ないため、やや緩めに設定して段階的に引き上げていくアプローチが推奨されます。
MAIからVOへ移行するタイミングはいつですか?
MAIで安定したROASとインストールボリュームを2〜3週間継続できている状態が移行の目安です。具体的には、広告グループあたり週50件以上のインストールを安定的に獲得し、ROAS下限を段階的に引き上げても配信量が維持できている場合、VOに移行してROAS最大化を狙う準備が整っていると判断できます。
MAIで配信が出ない場合はどうすればよいですか?
まずROAS下限の設定を見直してください。現状のDay 7 ROASに対してROAS下限が高すぎると、条件を満たすユーザーが少なく配信が出ません。ROAS下限を10〜20%引き下げて様子を見るのが最初のアクションです。それでも改善しない場合は、ターゲティングを広げる、クリエイティブを追加する、日予算を上げるといった対応を順番に試してください。

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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の広告成果やパフォーマンスを保証するものではありません。記載されている数値・相場・ベンチマークは公開情報および当社の運用実績に基づく参考値であり、実際の成果は商材・市場環境・運用条件等により異なります。広告運用に関する意思決定は、ご自身の責任において行ってください。